2006年入試(平成18年度入試)
苦手教科を履修しない先生が教える?


小泉総理が一番熱心な改革は、実は教育改革ではないかと密かに思っている。というのは、特区における株式会社の学校設立に関する規制緩和等、文科省の抵抗で見送られたものを、首相の指示で再度盛り込むなど指導力を発揮しているからだ。

ところで、それが良いことばかりかというとそうでもない。皆さんは次のことをご存じだろうか。

平成12年に改正教職員免許法が施行された。それ以前に小学校教員一種免許を取得するには、「教科の指導法」と「教科に関する科目」は全教科単位修得が義務づけられていた。

しかし、改正後は「教科に関する科目」を1科目以上8単位取得すれば良いことになった。通常1科目2単位で講義は構成されていることから、最低では4教科取得すれば良いことになる。すると教える教科の内容に精通していない先生が誕生することになる。

もちろん大学によっては独自の考え方により、これ以上の必修単位数を設けているから、この限りではないが従来通り全教科履修する大学は3分の1強である。関東圏では学芸大と千葉大のみ(平成15年度の時点)。近年理科や数学が苦手な学生が増えていることから、必修でなければこれを敬遠して免許を取得する学生が増えることが指摘されている。

また、小学校での授業配分の多い科目とそうでない科目が同じ単位数で十分なのかという疑問も当然起きる。さらに言うと、例えば社会と言っても地理・歴史・公民の分野があり、それぞれについて深い専門知識を教員養成課程の中で与えるのは至難の業である。

最近、私立大学入試では理数系の科目を選択せずに大学へ入学してくる学生も多く、数学や理科が中学レベルの知識に留まってしまっている学生に、小学生とは言え理数系の教科を教えることができるのだろうか。

以上のことから分かるように、教科についての専門性は塾講師が勝るのはある意味当然と言える。小学校教員に求められている力量は、もっと広いものだからだ。しかし、中学受験という現実を前にすると、公立学校が目指す最低限小学生として必要な学力では大幅に不足していることは明らかとなる。

一方塾では講師を教科毎に専任とすることができる。大学院で専門的な知識を身につけてきた講師もいる。それらを背景に教える技術が伴えば、授業が面白くないわけがない。生徒も受験を志している段階で、学力が高い生徒が選抜されている。

そこで公立学校でも補習等で塾講師が教えるケースが出てきた。しかし、それはごく一部の学校だ。だから塾で受験勉強を始める前に、計算と漢字読み書きの基本は家庭で身につけておく必要がある。ちょうどオリンピックを目指すアスリートが筋力トレーニングやランニングをして基礎体力を身につけるように。それが中学受験成功への道の第一歩となるはずだ。