続・なぜ私学を選ぶのですか?
【中学入試に対する思いこみ】

「なぜ私学を選ぶのですか」では、大学が終点ではなくその後の人生を睨んで私立中学受験を考えようと書いた。しかしながら未だに塾の説明会で学校選択の最大の条件として語られるのは「大学進学実績」だ。

 

曰く、

・都立トップ校と私立中堅校が同程度の大学進学実績で、私学の方が現役合格率が高い。

・高校受験でトップ校に入るのは難しい。

・公立のカリキュラムでは塾通いが必須。私立は5年間で高3年までの教科を学習し、最後の1年は大学受験対策を組んでいる。

等々。

「だから私立中高一貫校がいいですよ。」という具合。

 

確かにそういう面はある。全員が受験生となる高校受験でトップ校合格は難しいだろう。公立校のカリキュラムには限界があるだろう。しかし、それも現状では変わってきている。

 

都立中高一貫校が相次いで開校し、来年度からは入試で書類による足切りを行わなくなる。こうなると数倍〜十倍の難関をくぐって入学する生徒が誕生する。私立中受験層と異なるとはいえ、このこども達の資質は驚異だ。

 

また、よく考えてみれば中学受験する層の生徒が公立中へ行って高校受験したらトップ校に入るのは必ずしも難しいことではないと思える。中学受験する生徒は、小学生全体から見れば学力上位のこども達だからだ。おまけに高校入試問題は難問ではない。真面目に勉強していれば必ず点が取れるはず。

 

さらに私立中学に通いながら塾に通っている生徒も多い。一貫校生御用達の塾があり、原則として中1からしか入塾できない有名塾すらある。

 

そして私立中高一貫校も上位校になればなるほど、特別な大学受験対策などは行っていないのが現実だ。伝統のある進学校は学校が進学体制を敷いているのではなく、進学に対する意識の高い生徒が集まっているという結果が大学入試に表れているに過ぎない。

 

【私立中学ならではのメリット】

 

では中学入試に対する先入観を捨てたらどんな展望が開けるのだろうか。大学進学実績だけでは公立に対する優位性がないとすれば、学校のポリシーこそ私学ならではのものと言える。

 

公立は経営母体が自治体であり、国の教育政策を基本的に反映する。確かに個性的な教育長や校長のいる学校は、特徴のある教育をしているケースが多い。しかし、これは組織的に行われていると言い難く、トップの交代によって独自性は薄まってしまう。

 

つまり公立学校には経営方針に継続性が期待できないということだ。そもそも経営という概念が乏しく、「運営」どまりと思う。

 

それに比べて私学には、生徒が集まらなければ経営破綻の恐れがあり、常に危機感がある。そこで独自の校風を作り出し、生徒を集めようとする。校風の元となるのが学校の教育理念であり経営理念なのだ。

 

だから志望校選びではまず、その学校の理念を知らなくてはならない。次にその理念を具体化するアクションが取られているかを見るべきだ。理念は立派でもそれに伴った活動が行われていない、かけ声倒れの学校も中にはあるからだ。

 

具体的アクションというのは、学校が生徒達に用意した様々な仕掛けに表れる。ユニークな授業であったり、課題であったり、校外活動であったりする。そこに大いに工夫を凝らし、年々改善されているようであれば期待できる学校と言える。

 

反対にに伝統を頑なに守り大学進学率の低下など何処ふく風と、「社会に出てから本校の教育が生きる」と言い切る学校もまた、その伝統に引かれる生徒には好ましく映るはず。

 

足下が定まらず中途半端な経営をしていては、私学の良さは活かされない。そのような学校は少子化の時代を生き残れないだろう。

 

繰り返しになるが、志望校選択に迷いが生じたときこそ偏差値や大学進学実績から離れて、わが子に相応しい学校なのかどうかを問いかけて受験校を選んでいただきたいと強く願う。
e-お受験 黒田官兵衛筆
文責 木下 健藏