■小学校受験対策は、
「いつから・・・」「何から・・・」はじめたらよいか?
こぐま会  齋藤 洋

小学校受験を考えておられるお母様・お父様は、「受験対策はいつから始めたらよいのか?」「何から始めたら
よいのか?」に、心を悩ませておられることだと思います。こぐま会にもたくさんのご相談が寄せられます。
その中には、いろいろな年齢のお子様をお持ちのご両親がいらっしゃいます。

 

私は、「いつから始めたらよいのか?」のご相談には、ほとんどの場合、「今から」とお答えするようにしてい
ます。

幼児には、その時期にあった親と子の関わりが、いつでも必要です。そしてそのことが、小学校受験にも、とて
も大切なことなのです。受験準備は、人任せ・教室任せではなく、まずご両親の取り組みから始まると言ってよ
いでしょう。

今、小学校入試では、子どもにいろいろな力を求めています。行動観察重視。かなり以前から言われてきたこと
ですが、それだけではありません。学校側が子どもに求めているものの変化は、入試のいろいろな部分に、細か
く現れていると思います。学力試験のペーパーテストだけをとっても、ただ知識の多さを求めているだけではあ
りません。早い作業能力だけでもありません。問題の中には、親と一緒に、何を見て、何を聞いて、何をし、何
を感じて…育ってきたかを、細かく見ようという意識が強く感じられます。それが、その子どもの将来の可能性
に、大きく影響するということからなのでしょう。

受験してきた子どもが、どのような環境の中で、どのような言葉がけをされながら、育てられてきたか。つまり
、その子どもの親が、その子を、どのように育てようと考え、育んできたかを、子どもの様々な知識の持ち方や
、思考方法・行動からチェックしようとしているようです。以前からよく使われてきた言葉ですが、「小学校受
験は、誕生から入試までの、子育ての総決算」であると言うのは、まさに最近の入試のことだと感じさせられま
す。

ですから、小学校の受験対策は、「教室に通い始める時期はいつ頃からがいいか」を悩んでいるよりも先に、入
試で出題される内容をチェックしつつ、日常的な子どもとの関わりの中で、すぐにでも開始して欲しいのです。

その学習方法としては、こぐま会から出している、様々な読み物や教材を利用していただければと思います。授
業に参加していただければ、なお一層効果のある学習方法が採れるはずです。「教室に通い始める時期…」につ
いては、学校別の傾向に合わせた学習を並行させて行うのが、年中の夏あたりからだとして、年中になる4月く
らいには、集団の中での系統だった学習に参加し、基礎を確認し始めることをお勧めします。

かと言って、まだ何も行っていないし、もうすぐ年長になるお子様の場合でも、「出遅れたから受験は無理」と
決めつけることはありません。幼稚園・保育園で、年長に進級してから受験準備を始めても、いくつもの小学校
に合格をした子は少なからずいます。もちろんそのような方法が、全ての子どもたちに当てはまるわけではあり
ませんから、それなりに工夫も必要です。しかし、気がついた時にすぐにスタートすることが、受験に間にあう
かどうかではなく、子どもの小学校入学後についても考えてみれば、絶対に必要なことだと思います。

そこで問題となるのは、「何から始めたらよいのか?」についてです。

上記の、学校側が求めている「親の子育てのあり方」というのは、小学校受験をする、しないに関わらず、幼児
期の子育てに、とても大切なことです。また幼児期の学習は、こぐま会では、すべての子どもたちに必要だと考
えています。

これが、こぐま会の基本理念である「教科前基礎教育」の考え方です。小学校受験の対策は、その基本理念があ
ってこそ、成り立っているものです。受験対策であっても、具体物を使い、対話を重視した授業内容を大切にし
ている理由です。当然カリキュラムも、系統性を第一にしているのです。

多くの受験塾?が、年中児のかなり早い時期から、ペーパートレーニング中心の授業をしていると聞きます。こ
ぐま会でもペーパーを使った学習(プリント学習)をしないわけではありません。ペーパーも必要だと考えてい
るからこそ、「ひとりでとっくん」をはじめとする多くの問題集を、授業を担当している私たち自らが作ってい
るのです。しかし、子どもたちが新しい学習課題に取りかかる、第1段階がペーパートレーニングであることは
認めません。それは、中学校受験であってもありえないことでしょう。そのことは、教室でもご家庭でも同じこ
とです。

ペーパー中心ではない、こぐま会と同じような方針の幼児教室が見つかり、信頼の置ける先生の指導が受けられ
る場合は、その先生の指導方針に沿って、家庭学習を進めていけばよいでしょう。その際に次の点を確認して下
さい。それは前述の、

「学校側は子どもに…、親と一緒に、何を見て、何を聞いて、何をし、何を感じて…育ってきたか?を求めてい
る。」ということです。

ですから、生活の中のいろいろなことに子どもと一緒に関わり、その中にある学習のポイントをしっかり意識を
持って経験させるようにしていって下さい。その学習のポイントは、ご両親がとらえやすいように、おおまかに
次のように分類整理しておくとよいかもしれません。こぐま会の授業も
基本的には、同じ考え方です。

〈量の学習〉
・大きさ、長さ、高さ、多さ、重さなどについて、2つのものを比較することから、3つ以上のものを系列化で
きるようにしていく。
〈位置の学習〉
・上、下、前、後、右、左の位置関係と、何番目という一表現を中心に、様々な生活上の位置表現を理解し、表
現できる力を養う。
〈数の学習〉
・20までのものの計数、多少判断を基本に、10前後までの数の増減を生活の中で意識する。また分配(等分)
、一対多対応(例.一人に2つずつのリンゴは、3人でいくつ必要かなど)を、実物をイメージして考える力を
養う。
〈図形の学習〉
・図形構成−分割(パズル)の経験を積む。また形を重ねたり、裏返したり、回転したりする変化に対応する力
を養う。
〈言語の学習〉
・他の人に物事を伝えるための、正確な言葉と話し方を身につける。また人の話をしっかり聞き、理解できる力
を養うために、日常の会話を大切にする。
〈その他〉
・生活の中にある常識(自然{季節・生き物}・道具や身の回りの具体物・理科的常識・道徳・社会常識など)
を、知るための体験と会話を重ねる。
・生活上必要な、手先の巧緻性の力を養う。(塗る・描く{運筆と描画}・切る{ちぎる}・紐結び・紐通しな
ど)
・しっかり歩く、走ることを基本に、年長以降、ボール運動やマット運動、縄跳びなどに自信を持てるように。

通える幼児教室が見つからない時、またご家庭の事情で、ひとまず家庭学習だけで進めていかざるをえない方も
同じように、生活の中で意識をしてみて下さい。やるべきことがたくさん見つかるはずです。このような関わり
を大切にしていただいた上で、ペーパーを効果的に活用していただきたいと思います。

 

ペーパー中心の多くの塾では、小学校入試で出題された問題と同じレベルのものを、早い時期から盛り込んでい
るようです。幼児の中で、そのレベルの問題を自分の力で解くことのできるのは、今受験が終わったばかりの、
4月に小学校1年生になる子どもたちだけです。これから年長になる子にはもちろん、これから年中になる子に
その問題が解けることはまずありませんし、そのペーパーを繰り返し行う学習方法が、その子にとって有効であ
るわけがありません。

こういった授業を行っている場所は、幼児教室とは呼びません。子どもの発達を無視しているからです。無視し
ているのではなく、考えたことも無いのかも知れませんね。さらに、極めて易しいぺ−パーと入試レベルのペー
パーが、一回の授業に使用するペーパーの中に混ざっていることがあるようです。なぜでしょうか?

ある教室の先生は、「易しい問題ばかりでは力がつきません。でも難しい問題ばかりでは自信がつきません。だ
からいろいろな問題を混ぜるのです。」とおっしゃったそうです。

言葉だけを聞くといかにもと思いますが、子どもが自分の力で解けない問題を混ぜることの答えにはなっていま
せん。ただ枚数を揃えるために、いろいろな問題を入れただけのようにも思えます。

易しいとか難しいということではないのです。その子どもの年齢にあった、発達状況にふさわしい問題であるか
どうかなのです。ふさわしいというのは、一通り説明をすることで、その意味を理解し、自分の力で取り組むこ
とができる問題であるということです。取り組むことができる問題の中に易しいもの、難しいものがあるのです。

説明をしても理解できない、取り組むことはもちろんできないという問題は、難しいという域を遥かに超えてい
ます。「ご家庭でできるようにしてきて下さい。」と宿題にしてしまう塾もあるようです。子どもによっては、
分かったふりをして要領よく対応してきてしまう場合もあるようで、そのような子どもは毎回褒められるようで
すが、本当に理解しているのでしょうか?

説明で理解できるというのは、具体的な生活の中の事例を挙げれば、納得ができるということです。どの子ども
にも、その事例を挙げたら分かる時期があります。経験により個人差は確かにあります。しかし一般的な幼児の
、成長・発達と経験可能なことかどうかについての検討は、無視できません。またその個人差を埋めるために、
具体物での学習が絶対に必要です。

例えば、シーソーで重さ比べをしたことがない子どもに、ペーパーでの「シーソーを使った4者関係」は無理で
すし、「シーソーのつりあい」などもってのほかです。シーソーのつりあいは、さらにかけ算の基本である「一
対多対応」の理解が必要な場合があります。

ですから、ペーパーを使用するにしても、ペーパーの内容やレベルには、十分な吟味が必要なのです。

 

教室で行う授業内容は、子どもの成長・発達をしっかり見据えた、系統性を持ったものでなければなりませんし
、その授業を行う教師がそのことを十分に知り尽くした者でなければなりません。またその内容は、小学校入学
後、それ以降も、役に立つものでなければなりません。しかし小学校の教科学習を先取りしたもの、あるいは内
容を薄めたり、易しくしただけのものではありません。

教科学習に入る前に、基本的なものの考え方を身につける必要があります。それは、我々大人の思考方法とは違
うものだと言ってよいでしょう。ですから大人の論理を押しつけるだけではだめで、子どもの発達状況を、常に
推し量りながら、丁寧に指導されていくべきものです。

またその授業がいかにすばらしくとも、それだけでも十分ではありません。教室で行うことを、子どもの学力と
してしっかり身につけ、さらに将来に渡って役に立つ力に育て上げるためには、その学習を、子どもの生活の中
に生かしていくことが必要です。さまざまな経験に結びつけ、さらに経験を積ませる必要があります。子ども自
身も主体的に取り組んでいきます。しかしお母様・お父様の関わりがあれば、その経験は印象深いものとなり、
より確実なものになるはずです。

子どもたちは、宝の山に囲まれています。その宝に気づかせてあげ、その宝をいかにたくさん子ども自身のもの
にしていくかは、周りの大人、特にご両親の協力が必要なのです。

お母様・お父様が、お子様に学習機会をとお考えになったその時が、学習を始める、まさにそのチャンスです。
そのお気持ちを、具体的な学習
に結びつけていくために、まずはお子さまとの関わりを工夫してみて下さい。

こぐま会は、独自の指導方法と豊富な入試情報で、皆様の子育てと入試対策をバックアップさせていただきます。

こぐま会  齋藤 洋
e-お受験  木下 健藏
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